ダイレクトマーケティングフォーラム2010 Need to become more engaged? 新しいだけの手法に意味は無い。求められるのは…、時代をつかめる手法のみ。

第1回スペシャルインタビュー~基調講演 講師 奥井俊史氏~

奥井俊史氏

~「IT」と「人間力」を組み合わせ新規需要創出へ

アンクル・アウル コンサルティング 代表
前ハーレーダビッドソン ジャパン株式会社社長   奥井 俊史

「商品ではなく“ハーレーライフ”という楽しみを買っていただく」。長期低落する二輪市場の中で、右肩上がり成長を実現させてきたハーレーダビッドソンジャパン(HDJ)。19年間にわたって社長を務めた奥井俊史氏は、事業成功のヒントとしてバーチャルとリアルの連動マーケティングを掲げる。

価格競争からの脱却にはブランド構築が手段の1つ

昨今の小売業界を見ると、各企業が懸命に努力しているにもかかわらず、結果的にはそれが商品価格の低下やデフレにつながっている。これまで自分が携わってきたのはディーラーや販売店を通じたBtoBtoC市場で、いわば消費者とは間接的な接点が中心だった。ただ現在の小売業界を見ていると、努力してもなかなか報われないという憔悴感が伝わってくる。

難しい現状ではあるが、価格競争を回避できる数少ない手段の1つとして“ブランド”が挙げられる。うまく構築できれば、ブランドは商品寿命ではなく企業寿命と一緒に生きていくことが可能だ。ブランドを創り上げるには商品だけでなくさまざまな要素が必要となるが、中でも求められるのは顧客サポートのキメ細かさなど“ソフト”部分といえよう。

独自性や連動性で顧客価値を追求する

ハーレーのようなBtoBtoCビジネスでソフトの部分を考えた場合、まず重要なのはディーラーや販売店との連動だった。メーカーとして商品を彼らに委託した後、どうやって店頭までの一貫した顧客サポートを手がけていくことができるか。商品だけでなく、ブランドとしての価値やキメ細かいサービスをどのように提供できるか――。自分が社長に就任する前は、いったんディーラーを通じて販売店に商品を託してしまえばそこで終わりだった。どの車両をどのようなユーザーに売ったのかも分からず、販売店ではアフターサービスもままならなかった。

そこで販売店に説得やお願いに回り、いわば販売網の再構築を実施。売りっぱなしではなく、きちんとアフターサービスを行えるような体制整備をしてもらい、顧客の信頼感や満足度を上げていった。ハーレーの平均寿命は50年と一般自動車の約5倍近くもあるため、部品を揃えたり、メンテナンスなどの長期サービスが不可欠だったからだ。

独自性の面では、定期的にHDJ主催やディーラーと共催のイベントを開き、家族やカップルで楽しめる催しも実施。ネイルコーナーなどを設け、女性顧客をはじめ、男性顧客の奥さんや恋人の好感度を高めるようなイメージづくりに励んだ。おかげで女性顧客の比率は8%と、17年間で約6倍に増えた。イベントでは来場客にハーレーのミニチュア模型プレゼントも行い、何回も訪れて全型を集めてくれた顧客もいる。

「商品」でなく「楽しみ方」や「価値」を売る

まずは「ハーレーに乗ればこんな楽しいことがある」と、楽しみのための道具や、自己表現手段として購入してもらうことに注力。“ハーレーライフ”を通じて人生の価値を生み出してもらおうという理念が、HDJで手がけてきた自分のマーケティング原点だ。さらに、“つながり”が今回の「ダイレクトマーケティングフォーラム」のテーマになっているが、ハーレーのマーケティングでもつながりや絆が顧客創出に向けた重要ポイントだった。使って楽しむ商品であり、しかも長期にわたって愛用してもらうのだから、顧客とつながりや絆は不可欠。そのため、ハーレー専門の月刊誌やクラブ運営などのコミュニティ活動を通じ、絆を強化している。こういったHDJ独自のマーケティング手法を「ライフスタイルマーケティング」と呼んでいて、フィリップ・コトラーの言葉にある「競争力ある優れたオファーによって顧客は創造される」という中の「優れたオファー」に当たる部分の提供に努めた。

“居所”の存在は顧客の信頼・安心につながる

ダイレクトマーケティングの優位性は何かと考えた場合、時間の制約がないという従来からの便利さに加え、インターネットの発達による情報量の豊富さが挙げられる。購入前に商品の特長や価格を比較できるという面でも、優れた形態のビジネスといえよう。さらにコンビニで商品受け取りや支払いもできるようになり、こういったリアルの拠点があることで消費者の安心感も増している。アンテナショップなど店舗を設ける通販企業も増えていると聞くが、拠点や店舗といったリアルな“居所”が存在することは重要だと思う。HDJもディーラーや販売店などを通じてアフターサービスを行っており、これら居所でのサポートが安心感や信頼感向上につながっているからだ。

バーチャルとリアルをミックスしたマーケティングが有効

私が提唱している「バーチャリティーマーケティング」とは、バーチャルとリアルな手法がミックスした手法だ。ITやシステムなどいわゆる“装置”が主役のバーチャル手法ももちろん必要だが、こういった装置は性能の優れたものを随時導入していけば企業間でそれほど差は生じない。一方で、人の力や心が重要となるリアル手法については、どのように要素を組み込むかで大きな差別化につながる。従ってこれからはバーチャルの「頭」とリアルの「手足」をスムーズに連動させることが、新規需要の創出につながっていくと考えられる。

取材協力:通販研究所

講演者 アンクル・アウル コンサルティング 代表
前 ハーレーダビッドソン ジャパン株式会社 社長
奥井 俊史
講演内容 基調講演「バーチャリティー マーケティング」
講演日程 2010年1月26日(火)10:00~11:00 東京会場
2010年2月2日(火) 9:30~10:30 大阪会場
講演概要 新しいだけの手法には、意味は無い。いつの時代にもどんな手法でも、マーケティングへの活用を目指す以上、期待される意味や効果は、「新規需要の創出」につながることであり、特にBtoC で考えると、人の心との良好な関係性を構築できることが決定的に重要です。この観点を深めた結果、やはり原点としてのバーチャルとリアリティーをミックスした「バーチャリティーなマーケティング」に行きついたハーレーダビッドソン ジャパンでの事例をご紹介し、皆さまに改めて意外なショックをご提供します。

講演者プロフィール

大阪外国語大学中国語科卒。トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)に入社。1980年に初代北京事務所所長に就任し、主に途上国への輸出に携わる。1990年ハーレーダビッドソンジャパンへ移り、翌1991年社長に就任後、19年間社長在任する。日本の大型バイク市場でハーレーダビッドソンをトップブランドに育て上げた。2009年同社最高顧問を歴任の後、2009年9月に「アンクル・アウルコンサルティング」を設立。マーケティング理論やCRMシステムの構築、製・販の取り組みなど独自の理論展開に基づくセミナーや執筆活動を行う。


※基調講演の講師は変更となりました。詳しくはこちらのページをご覧下さい。

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